MENU
iCracked、登録修理業者までの道のり(その2)
コラム 最終更新日: 掲載日:

前篇はこちら

iCracked、登録修理業者までの道のり(その1)


検査機関の選定

iCrackedで修理を行う機種は全てを修理登録修理業者制度に登録することを決め、専任チームを立ち上げた私たちは1機種目の申請に向けて準備を始めました。1機種目は、当時もっとも修理件数が多かったiPhone 6にしました。

登録修理業者制度では修理品質のみならず、管理する体制や修理記録の作成など多くのことが求められ、申請時に提出する書類も多岐にわたります。しかし最も重要なのは「修理をした端末が、電波法や電気通信事業法で定めた技術基準に適合しているか」ということです。これは実際に試験をするしかありません。

修理業者が自ら試験することも可能なのですが、私たちは外部の検査機関に委託することにしました。

iPhoneなど日本で販売されているスマートフォンには、いわゆる「技適マーク」というものが表示されています。昔の携帯電話にはバッテリーを外した本体の裏側などにシールが貼られていましたが、最近のスマートフォンはソフトウェアで電子的に表示しています。(iPhoneであれば「設定」→「一般」→「認証」というところに各国の認証情報が表示されます。)

iPhone 6の技適マーク

この技適マークを取得するには国から認められた検査機関で試験を行い認証をもらう必要があります。
電波法に関する認証を行うのが「登録証明機関」、電気通信事業法に関する認証を行うのが「登録認定機関」といいます。

登録修理業者となるためには電波法、電気通信事業法の試験が必要となりますが、私たちが修理したiPhoneの検査はそれぞれ登録証明機関、登録認定機関の中から選定してお願いすることにしました。国からのお墨付きのある検査機関の試験結果の方が審査が通りやすいだろうと思ったからです(笑)

「これらの試験結果に修理手順書や体制図、管理方法など必要な書類を揃えて申請すれば登録完了」と思っていました。

2つ目の誤算

登録修理業者制度規則では同一機種の2台目以降の修理については「技術基準に適合していることが合理的に推定できる場合は、試験を省略することができる」とされています。

同じ修理部材を使って、同じ手順で修理するのだから、2台目以降の修理については試験は必要ないと思い込んでいました。
私たちが検査機関にお願いしている試験は1台100万円以上の費用がかかり、数日間は端末を預けなければできませんので、
修理したiPhone全数について試験を行うことはそもそも不可能です。

iCracked 「全て同じ部材、同じ手順で修理します。2台目以降も技適に合致すると推定できるので試験は省略します。」
総務省 「どうして、2台目以降の修理が適切に行われたと言い切れるのですか?」
iCracked 「えっ?!」

「同じ部材、同じ手順でやってるので大丈夫です」で通るほど甘くありませんでした。
私たちと同時期に申請していた業者さんは、同じように申請して、同じようにダメだしされたのではないかと思います(笑)

でも、考えてみれば総務省の指摘はもっともなんです。iPhoneの修理は同じ機種とはいっても、壊れ方はそれぞれなので修理が完全に同じということはありません。修理するスタッフも一人ではないですし。

「どうすれば、店舗で修理が適切に行われたことを確認できるんだろう?」

ここから苦悩の数か月が始まりました。

苦渋の決断

どうすれば、店舗で運用可能な方法で、修理が適切に行われたことを証明できるのか?

案はいくつか出ましたが、どれも充分とは思えません。しかし悩んでいても始まらないので、総務省にぶつけてみますが予想通りあえなく撃沈。

打開策が見えず、時だけが過ぎていくなかで、誰もが避けていた一言が発せられました。

「こうなったら全店に電波測定器を置くしかないんじゃない?」

そう、初期に「コストが合わないだろ」と軽く却下した全店測定器案です。
電波特性を測定する機器は、端末メーカーや通信キャリアが購入するような代物で、街中の修理店に置くようなものではありません。現行品を購入すると軽く2000万円とかしてしまうし、操作にはかなりの知識が必要です。

実はこの頃、「登録している修理業者は抜き取り検査を行っているらしい」という噂が聞こえてきました。300台に1台とか、500台に1台とか決めて試験を行っているとのこと。

私たちも抜き取り試験は検討したのですが、それが適しているとは思えませんでした。

登録修理業者制度では、画面やバッテリーなど電波特性に影響を与える恐れが少ない個所の修理しか認められていません。電波に影響のあるアンテナやチップセットなどは修理してはいけないのです。逆に言えば、「認められた範囲の修理で電波特性などが変わることはないだろう」ということです。それでも同じ部材、同じ手順なので試験を省略してもOKとならないのは、「全ての修理が適切に行われたことの確認」を求められているからだと理解したからです。

例えば、もし修理スタッフが気づかないうちに誤ってアンテナを破損してしまっていたら、そのiPhoneの電波特性は変わってしまい、技適に合致しない違法な端末となっている可能性があります。抜き取り検査ではこれらの「気づかない修理ミス」を見逃してしまうことになります。

それに「お客様のiPhoneを何日か預けてもらって試験するなんて無理でしょう!」というのも、私たちが抜き取り検査を選ばなかった理由です。

こうして、消去法的に「全店に電波測定器を置く」という方法を模索しはじめました。

ようやく見えた光明

全店に測定器を置くことの最大のハードルは測定器のコストでした。
新しい店を作るのに物件の敷金や内外装の工事費などで数百万円はかかります。これだけでもかなり大変なのに、全店に1台2000万円の機械を置くなんてできません。

「修理が適切に行われたことを確認するだけなら、全ての試験をする必要はないんじゃない?」

確かに測定範囲が限られる旧型の測定器ならもっと安く調達できます。

  • 1台目は検査機関で特性試験を行う。
  • 2台目以降は、店舗で試験内容を絞って測定し、特性試験の結果と一致していることを確認する。

これで「2台目以降も技適に合致していることを合理的に推定できる」と言えるのではないか?

早速、資料にまとめ総務省に赴きました。

ようやくOKいただけました!

方向性は決まりましたが、まだまだ課題はたくさん残っていました。


登録修理業者までの道のり(その3)