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iCracked、登録修理業者までの道のり(その3)
コラム 最終更新日: 掲載日:

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iCracked、登録修理業者までの道のり(その1)

iCracked、登録修理業者までの道のり(その2)


目次

世界中からかき集めろ!

全店舗に測定器を設置して修理の確認を行う方針は決めましたが、測定器の調達にはかなり苦労しました。

  • 私たちの求める範囲、精度の測定が可能
  • 1台300万円以下に抑えたい
  • iCracked Storeの店舗数拡大に対応できる台数を確保できる

特性試験レベルの精度で測定できる機器は、実はそれほど選択肢が多くありません。それなりに台数が出荷されたモデルとなると、ほぼ2社の製品に絞られてしまいます。結局、どのモデルも国内では十分な台数が調達できず、海外でかき集めて日本に運ぶことになってしまいました。

電波測定器

iCracked Storeに設置することにした測定器は独Rohde&Schwarz社製のものです。台数をまとめて調達したので当初想定していたよりは安くなりましたが、それでも結構な出費になってしまいました。

※ 約3年間の測定実績を踏まえて総務省と協議を行い、2019年12月現在は全数測定ではなく一定割合での測定へと変更しております。この変更に伴い測定器を設置していない店舗もありますが、全て制度に則った登録修理となりますのでご安心ください。

誰でも測定できるように!

iTechは修理のトレーニングは積んでいますが、電波のプロではありません。どの店舗でも、どの機種でも、どのiTechでも同じように測定を行えるようにしなければなりません。

私たちが生活している環境では、携帯電話など様々な電波が飛び交っています。正しく測定するには外部からの邪魔な電波をシャットアウトしなければなりません。検査機関ではシールドルームや電波暗室といった金属で覆われた部屋の中で測定しますが、iCracked Storeにそんなものはつくれませんので、代わりにシールドボックスという箱の中で測定します。

シールドボックス

このシールドボックスにはアンテナが内蔵されており、ケーブルで測定器に接続されています。
普段、iPhoneはNTTドコモやau、ソフトバンクがビルの屋上などに設置したアンテナ(基地局)と無線接続して通信します。iPhoneには契約者であることを認証するために各携帯電話キャリアから配られたSIMカードを挿しています。

シールドボックスの中ではiCrackedが携帯電話キャリアです。箱の中のアンテナはテスト用のSIMカードを挿したiPhoneと無線接続し、測定器はその時のiPhoneからの電波特性を測ります。

しかし、これがなかなかやっかいです。同じiPhoneでもシールドボックス内の置く位置が1cm変わるだけで、測定結果には差が出てしまいます。これが、大きさやアンテナの位置が異なる別モデルのiPhoneだと全く異なる結果となってしまいます。

そこで今度はiCracked Store専用の測定プログラムを開発しました。
iTechはテスト用のSIMカードを挿したiPhoneをシールドボックスの決められた位置に置き、測定器に接続されたプログラムで機種を選択しボタンを押すだけ。プログラムが自動で測定を行い、測定結果からOK/NGを返してくれるようにしました。

これで、誰でも簡単に修理が問題なく行われたことを確認できるようになりました。

「較正」というハードル

測定器は使用環境や経年変化などで測定結果にばらつきが出てくる可能性があるため、電波法では特性試験などを行う測定器には年1回の「較正」という検査と調整を行うことが義務付けられています。「較正してから1年以内の機器で測定したもの」でないと法的には正しい測定結果として認められないということです。

iCracked Storeで行っているのは特性試験そのものではありませんが、店舗での測定結果を根拠に特性試験を省略するわけですから年1回の較正は行うことにしました。ただ、較正を行えるのは電波法で定めた設備があり、資格を持った人だけですので、iCrackedで行うことはできません。

全国に拡げていくiCracked Storeに設置する測定器をどうやって較正していこう?

結局、較正を行える業者さんと一緒に、測定器、PC、シールドボックスなど一式を発送して、店舗の測定器を年1回入れ替える体制を作りました。電波測定は繊細なので測定器だけ入れ替えというわけにはいかないのです。機器を全部接続して、同じ測定結果が得られるようセッティングして一式まるまる交換します。

恐らく、こんなことまでやっているiPhoneの修理屋さんなんてないと思います(笑)
私たちも登録修理業者になると決めた時点では想像すらしてませんでした!

2店舗目の準備開始!

測定器以外にも修理の管理システム、iTechの教育やサポートを行うシステムなど色々と整備しました。
まあ、これらは新たに構築したというより、既に利用していたものを制度に合うよう手直ししただけですが。

そんなこんなで「春までに登録」のつもりが、申請の目途がたったのは初夏になろうかという頃でした。
店を出すにはそれなりに時間がかかりますので、このタイミングで2店舗目の物件探しや、パートナーさんとの交渉も再開しました。イメージしていたのはお盆前には登録が完了し店舗オープンは9月です。

2店舗目は北海道のパートナーさんと一緒に札幌に出店することにしました。さっぽろ地下街のポールタウン、札幌駅からすすきの駅を結ぶ好立地です。工事日程、iTech研修などのスケジュールからオープン日も決めました。

「iCracked Store さっぽろポールタウン」 2016年9月20日(火)オープン!

それまでにはiPhone 6の登録は余裕で完了しているつもりでしたが、ここからもけっこう大変でした!
これ以上細かくは書きませんが、その後も色々とやりとりがあり最終的に申請を受理いただいたのは9月上旬。9月20日のオープン予定日までに登録が完了するかギリギリのタイミングです。

念願の登録修理業者に!

オープンを翌週に控えた9月16日(金)の朝、まだ登録が完了していません。

「どうする? 9月20日のオープン延期する?」
「今日決めないと間に合わないぞ!」

そんな相談をしているまさにその時、総務省から連絡をいただきました!
「登録が完了しました。通常は通知書を郵送するのですが、お急ぎでしたのでご連絡しました。取りに来られますか?」
「今すぐ伺います!!」

その日の朝に海外出張から戻ったばかりの担当者がジーンズにTシャツ、キャリーバッグを転がして霞ヶ関に向かいました(笑)

あれ!? イメージしていたものとはちょっと違う!

  • 登録修理業者の登録について(通知)
  • 登録修理業者の登録について(通知)

いや、別にいいんですよ、形なんてどうでも。

でも登録までの苦労が大きかったせいか、もう少し立派なものを想像してました。毛筆で書かれた賞状みたいなやつ!
実際はA4ペラ1枚の印刷で、紙も微妙に黄ばんでいます(笑)
(関係ないですが「総務大臣  山本 早苗」とありました。高市大臣は戸籍上は山本さんなんですね!)

こんな感じで1機種目の登録完了が2016年9月16日、なんとか9月20日のオープンに間に合いました!

その後、iCracked Storeで修理をおこなっているiPhone 5以降の各モデルの登録申請を進めました。
残念ながらiPhone 5は店舗で行っている電波測定ができない仕様であることが判明したため登録を断念しましたが、2017年2月7日に6機種、3月28日に2機種が登録完了となり、私たちで可能な9機種全てについて登録修理業者となりました!!

登録修理業者になると決めてから1年3ヶ月もかかってしまいました。


登録修理業者制度について思うこと(番外編)