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久しぶりに深センに行ってきた件
コラム 最終更新日: 掲載日:

約6年ぶりに深センに行ってきました。それまでは商談や打ち合わせで行く機会が多かったのですが、コロナ以降はZoomやGoogle MeetなどオンラインでのMTGが当たり前になったこともあり、海外出張がめっきりと減ってしまいました。

目次

深センは1970年代までは人口3万人程度の小さな漁村だったそうですが、1980年に経済特区に指定されてから急速に発展し、今では人口1,800万人の大都市です。HUAWEI、Xiaomi、Oppo、ZTEなどスマートフォンの大手メーカー、ドローン世界1位のDJI、電気自動車のBYD、WeChatで有名なTencentなど多くの大企業が深センに本拠地を構えています。高層の商業施設やオフィスビルが立ち並ぶエリアは未来都市のような雰囲気があります。深センで一番高い平安国際金融中心ビルは地上118階、599mで世界でも5番目の高さです。

  • 平安国際金融中心ビル
  • 115階のレストランからの夜景
    (Pixel 10 Pro Foldで撮影)

今回、感じたのはEV(電気自動車)が増えたなということ。BYDやTeslaなど日本でも有名なEVだけでなく、XiaomiやHuawei系のEVも多く走っていました。ちなみに日本ではたまに「BYD」のロゴのついたEVを目にしますが、中国ではBYDのロゴではなく「Beyond Your Dreams」というエンブレムが使われています。
Huaweiは複数の自動車メーカーとの共同開発でEVを展開していますが、そのうちの一つSTELATOの「S9」というモデルのタクシーに乗る機会がありました。後部座席にもタッチパネルの操作盤があり、ワンタッチで助手席が前に倒れてほぼフルフラットのシートになったり、大きなスクリーンが降りてきてプロジェクターで動画を見ることができたりと、飛行機のビジネスクラスのような感じです。

  • 後部座席にはプロジェクター
  • かなり大きいスクリーン(なぜかエビ)

また6年前には街中をシェアサイクルが走り回っていたのですが、今回はあまり目にしませんでした。代わりに圧倒的に多かったのが電動バイクです。日本では「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」と呼ばれているタイプですが、これが車道も歩道も所かまわず縦横無尽に走り回っています。日本では自転車に近いタイプが多いですが、中国では原付バイクのような大型のサイズが中心です。日本では車道では時速20km、歩道を走る時は時速6kmに制限されていますが、中国では歩道でも時速25㎞のうえ、リミッターを外してさらにスピードを出している人も多いとのこと。

これらが免許なしに乗れる状況はスリリングというレベルを超えてかなり危険で、滞在中に電動バイク同士の衝突に2回遭遇しただけでなく、歩道を歩いていたら追い抜いてきた電動バイクにぶつかられました。
このぶつかってきた若者は少し先のビルの前で電動バイクを降りてビルの中に駆け込んでいきました。Uber Eatsのようなデリバリーだったのですが、このデリバリーの遅れに対するペナルティーがかなり厳しいそうで、歩道でクラクションを鳴らしながら、歩行者の間を縫って飛ばしていく電動バイクがたくさんいます。

アメリカのセグウェイやドローンでも同じことを感じたのですが、アメリカにせよ中国にせよ、新しい商品やサービスには寛容で、まずはやってみて問題が大きくなったら後から規制を考えるという順番なので物事が変わるスピードが速い。一方で、日本では「問題が起きたらどうするんだ」とまずは禁止する。そして他国の状況も見ながら徐々に規制を緩めていくので、新しいものが普及するのにとても時間がかかる。日本のスタイルにはじれったさを感じることも少なくないのですが、一方で必要な規制はしっかりしないといけないなと思わされる体験でした。

深センとスマホ修理

以前にコラムで紹介したことがありますが深センはスマホ修理にとっては欠かせない都市で、iPhone修理で使用される互換パーツはほぼ全て深センで作られています。たまにお客様から「iCrackedで使っている修理パーツは日本製ですか?」という問い合わせをいただくことがありますが、純正部品も含め日本製の修理パーツは存在しません。もちろん互換パーツであっても内部には日本製のチップなどの部品が多く使われていますが、それらを組み立てて修理パーツとして完成させているのは深センの工場です。
ちなみに深セン市の急速な発展による賃料や人件費の高騰、環境規制強化が理由で、隣接する東莞市などに移転する工場が増えていますが、ここでは周辺都市も含めて「深セン」とさせていただきます。

iCrackedのiPhone修理は、IRPで使う純正パーツはApple社から購入しますが、それ以外のパーツはサプライヤーを通さず、深センの複数の工場から直接購入しています。これはサプライヤーを通さないことでコストを抑える目的もありますが、同時にサプライヤー経由では困難なカスタマイズをするためです。(品質向上のためケーブルやコネクターを指定したり、取り外した部品からの移植作業を減らすため工場であらかじめ新品のスモールパーツを取り付けるなど、特別な注文をしています。)

中国の工場と安定した取引を行うには信頼関係の構築がとても大事なのですが、工場は中国語しか話せない人が大半です。日本からリモートで取引するのは難しいため、iCrackedでは現地で業界に長いスタッフを採用して工場との交渉を任せています。

深センは修理部品の生産/供給拠点としてだけでなく、スマートフォンの修理拠点としても独自の発展をしています。深センの華強北というエリアは巨大な電気街として有名ですが、ここでは様々な部品が売られているだけでなく、修理業者も多数存在します。顧客のスマホを預かって部品交換を行うのは日本と同様ですが、特殊な器具が必要だったり、難易度が高い修理を専門的に行う業者が数多く存在します。

例えば、顧客から預かったスマホのディスプレイが、ガラスだけ割れており液晶や有機ELのパネルが無事な場合は、ガラスの張り替えを専門的に行っている業者に送ると、即時ガラス交換をして戻してくれる。iPhoneの互換ディスプレイやバッテリーを使うと表示される「不明な部品」のメッセージが嫌な場合は、古い純正部品と新しい互換部品を渡すと、メッセージが出ないように純正部品のチップを移植して戻してくれる。そのような作業を数百円の作業費で行っています。しかも、それらのデリバリーをしてくれる業者もあるので、外部に委託しても20~30分で修理されたスマホが手元に戻ってくるのです。以前は自分たちで色々とやる修理業者もあったようですが、効率化のため分業化が進んでいます。

あるビルの地下には、このような専門的な修理を行う業者がずらっと並んでいます。基板修理を専門に行っている業者では、eSIMのみに対応しているアメリカ版iPhoneから取り出した基板にSIMトレーを取り付け、基板の端子を繋ぎなおして他国で交換部品として使えるような修理(というより改造)を行っていました。

深センの特定エリアで、どんな部品でも手に入り、どんな修理でも行う業者があり、さらにそれらを結びつけるロジスティックが整っているからこそ可能な、独自の発展を遂げたスマホ修理の世界がありました。日本で同様のサービスが成立するとは思いませんが、スマホ修理のある意味で最先端の現場を目の当たりにして、考えさせられることが多い深セン訪問でした。

出張のお供にPixel 10 Pro Fold
(おまけ)

日数が長くなることの多い海外出張、いつもはノートPCを持っていくのですが、充電器も含めけっこうな重量になるうえ、空港の保安検査で毎回取り出すのも億劫です。今回の出張ではノートPCを持たず、Pixel 10 Pro FoldとBluetoothのキーボードだけにしてみました。長い文章を打つのもキーボードがあれば苦になりませんし、画面が大きいのでメールに資料が添付されていても、これだけで結構いけちゃいます。出張先でもがっつり資料作りをする人でなければ充分ですね。
Fold型の折りたたみスマホは、もちろん動画鑑賞にも向いてますが、それよりもビジネス利用で真価を発揮すると思います。

  • キーボードも折りたためるタイプ
  • 午前10時過ぎ、31度ありました